唾液が少ない原因とは?口の乾きを改善する効果的な方法
監修:歯科医師 高島 光洋
唾液が少なくて口が乾く「ドライマウス」で悩んでいませんか?口が乾いてもあまり気にしない方も中にはいらっしゃるでしょう。しかし、唾液の分泌低下は、単なる不快感だけでなく、虫歯や口臭、感染症のリスクを高める原因にもなるため注意が必要です。
このコラムでは、唾液が減る主な原因から、日常生活で実践できる効果的な改善策や医療機関を受診すべき目安まで、わかりやすく解説します。口の乾きを解消し、健康なお口環境を取り戻しましょう。
1.唾液の役割と「ドライマウス」とは?
1-1 健康な身体を保つ唾液の主な作用
1-2 唾液量が低下した「ドライマウス」の危険性
2.唾液が少なくなる主な原因
2-1 加齢に伴う唾液腺の機能低下
2-2 薬剤の副作用による影響
2-3 ストレスや自律神経の乱れ
2-4 口呼吸の習慣と水分の摂取不足
2-5 全身性の疾患(シェーグレン症候群や糖尿病)
3.唾液の分泌を促すセルフケアと対策
3-1 しっかり咬んで食べる食事の工夫
3-2 唾液腺マッサージのやり方
3-3 こまめな水分補給と室内保湿
3-4 保湿ケア用品の活用
4.歯科医院や医療機関を受診する目安
4-1 専門機関での相談が必要な症状
4-2 医療機関で行われる検査と治療法
5.唾液量を増やしてお口の健康を守ろう
唾液の役割と「ドライマウス」とは?
唾液の存在を日常生活の中で意識することはあまりないかもしれません。しかし、実は唾液は、お口や全身の健康を守るために極めて重要な働きを担っています。
まずは、唾液の基本的な役割と、分泌量が低下する状態について確認していきましょう。
健康な身体を保つ唾液の主な作用
唾液には、単に口の中を潤すだけでなく、多様な生理作用が存在します。公的な医療情報でも示されている代表的な作用は以下の通りです。
- 自浄作用:歯の表面や粘膜に付着した食べかすや細菌を洗い流す
- 抗菌作用:リゾチームやIgAなどの成分が病原菌の繁殖を抑える
- 消化作用:アミラーゼという酵素がでんぷんを分解し消化を助ける
- 粘膜保護・潤滑作用:発声や咀嚼、飲み込み(嚥下)をスムーズにする
- 緩衝作用:食事によって酸性に傾いたお口のpHを中性に戻し、歯が溶けるのを防ぐ
- 再石灰化作用:酸によって溶け出した歯のエナメル質にミネラルを補給する
これらの作用により、唾液は虫歯や歯周病、口内炎の発症を防ぐ役割を果たしています。
唾液量が低下した「ドライマウス」の危険性
唾液の分泌量が著しく低下し、お口の中が乾いた状態が継続する症状を「ドライマウス(口腔乾燥症)」と呼びます。唾液量が減ると、自浄作用や抗菌作用が十分に機能しなくなるため、虫歯や歯周病のリスクが飛躍的に高まります。
また、口臭が強くなったり、食べ物が飲み込みにくくなったり、舌の痛みが生じたりすることもあります。
さらに、お口の中の細菌が繁殖しやすくなることで、誤嚥性肺炎や風邪などの感染症にかかりやすくなる点にも注意が必要です。
唾液が少なくなる主な原因
一般的に、唾液の分泌量の低下は、複数の生活習慣や身体的変化が絡み合って起こります。
主な原因について具体的に解説します。
加齢に伴う唾液腺の機能低下
年齢を重ねるにつれて、唾液を作り出す「唾液腺」の組織自体が縮小し、分泌機能が低下することがわかっています。
また、加齢に伴い筋力が低下すると、咀嚼回数が減ります。そうして唾液腺への刺激が少なくなることも、分泌量低下の一因です。
薬剤の副作用による影響
ドライマウスの原因として、日常的に服用している医薬品の副作用が挙げられます。特に「抗ヒスタミン薬(アレルギー鼻炎薬など)」「抗うつ薬・抗不安薬(精神安定剤など)」「降圧薬(血圧を下げる薬)」「利尿薬」などには、自律神経に作用して唾液の分泌を抑える働き(抗コリン作用)を持つものが多く存在します。
ストレスや自律神経の乱れ
唾液の分泌は自律神経によってコントロールされています。リラックスしている時(副交感神経が優位な時)はサラサラとした唾液が多く分泌されますが、ストレスや緊張を感じている時(交感神経が優位な時)はネバネバとした唾液が少量しか出なくなります。
慢性的なストレスや不規則な生活は、唾液腺の働きを鈍らせる原因となります。
口呼吸の習慣と水分の摂取不足
鼻炎やアデノイド、咬み合わせの問題などが原因で日常的に「口呼吸」を行っていると、取り込んだ空気によってお口の中が常に乾燥します。
また、体内の水分が不足していると、体は水分を保持しようとするため、唾液の生成量そのものが減少します。
全身性の疾患(シェーグレン症候群や糖尿病)
特定の疾患が原因で、唾液の分泌が著しく低下することがあります。代表的な疾患は「シェーグレン症候群」と呼ばれる自己免疫疾患です。免疫の異常により唾液腺や涙腺が攻撃され、強い口の乾きや目の乾きを引き起こします。
また、糖尿病による高血糖状態や多尿、更年期障害に伴うホルモンバランスの変動も、唾液量の減少に関与します。
唾液の分泌を促すセルフケアと対策
お口の乾きを和らげ、唾液の分泌を促進するためには、日常生活の中で意識的な取り組みを行うことが効果的です。今日から実践できるセルフケアを紹介します。
しっかり咬んで食べる食事の工夫
食事の際、唾液は咬む刺激によって唾液腺が圧迫・刺激されることで大量に分泌されます。1回の食事で咬む回数を増やし、一口あたり30回を目安によく咬んで食べましょう。
根菜類や乾物など、咬み応えのある食材を積極的にメニューに取り入れると効果的です。ガム(虫歯予防のためキシリトール100%配合のもの)を咬むことも良い刺激になります。
唾液腺マッサージのやり方
お口の周囲にある大きな唾液腺(耳下腺・顎下腺・舌下腺)を外部から優しく刺激することで、唾液の分泌を直接促すことができます。
- 耳下腺(じかせん)マッサージ:上の奥歯のあたりのほおに人差し指から小指までの4本の指を当て、後ろから前へ向かって円を描くように優しく揉む(10回程度)
- 顎下腺(がっかせん)マッサージ:顎の骨の内側の柔らかい部分に親指を当て、耳の下から顎の先に向かって順に数箇所を押す(各5回程度)
- 舌下腺(ぜっかせん)マッサージ:顎の先の真下にある柔らかい部分を、両手の親指で上に向かって突き上げるように押し伸ばす(5回程度)
食事の前や、口の乾きを感じた際に行うとより効果的です。
こまめな水分補給と室内保湿
お口の乾燥を防ぐためには、喉が渇く前にこまめに水分を補給することが基本です。一度に大量に飲むのではなく、少しずつ口に含ませるようにして飲んでください。カフェインの入っていないお茶や水が適しています。
また、空気が乾燥する季節や、エアコンを使用する室内では、加湿器を活用して湿度を50〜60%程度に保つことが望ましいです。
保湿ケア用品の活用
市販されているドライマウス用の保湿ケア用品を利用することも有効です。スプレータイプ、ジェルタイプ、洗口液(マウスウォッシュ)などさまざまな種類があります。
就寝前や外出時など、水分補給が難しいタイミングで口腔用保湿ジェルを塗布しておくと、長時間の乾燥を防ぐことができます。
アルコール成分が含まれる洗口液は、逆に口を乾燥させることがあるため、ノンアルコールタイプを選びましょう。
歯科医院や医療機関を受診する目安
セルフケアを行っても症状が改善しない場合や、強い不快感がある場合は、放置せず医療機関に相談することが大切です。
受診のポイントについて解説します。
専門機関での相談が必要な症状
以下のような症状が見られる場合は、歯科医院や専門外来(ドライマウス外来など)の受診を推奨します。
- お口の中が乾いてうまく話せない
- 食事を飲み込みにくい、水がないと固形物を飲み込むことができない
- 舌がピリピリと痛む、または表面がひび割れている
- 口臭が強くなったと指摘された、または自分で強く感じる
- 目や皮膚など、全身的な乾きも同時に感じている
医療機関で行われる検査と治療法
歯科医院では、唾液の分泌量を調べる検査(ガムテストやサクソンテストなど)を行い、乾燥の程度や原因を診断します。
原因に応じて、以下のような治療やアプローチが行われます。
- 薬の調整に関する主治医への相談(持病の薬が原因と疑われる場合)
- 唾液分泌を促進する内服薬の処方
- 人工唾液(保湿スプレー)や医療用保湿ジェルの処方
- 虫歯や歯周病の予防処置(フッ素塗布やプロによる口内の清掃)
受診する際は、現在服用しているお薬の手帳を持参するとスムーズです。
唾液量を増やしてお口の健康を守ろう
唾液が少ない状態(ドライマウス)は、日常生活の質を下げるだけでなく、お口や全身の健康にさまざまな影響を及ぼします。原因は加齢や薬の副作用、ストレス、口呼吸など多岐にわたりますが、よく咬んで食べる習慣や唾液腺マッサージ、こまめな水分補給といったセルフケアで改善が期待できます。
セルフケアで症状が改善しない場合は、早めに歯科医院をはじめとする医療機関に相談し、適切なアプローチを行いましょう。
当院では無料カウンセリングも受け付けております。まずはお気軽にご相談ください。