熱いものがしみたら要注意?知っておきたい原因と対策
監修:歯科医師 高島 光洋
冷たいものがしみるだけではなく、もし熱いお茶やスープで歯がズキッとしたら……それは、歯が発している『黄色信号』かもしれません。
実は、熱いものがしみる症状は、冷たいものの時よりも事態が深刻なケースが多いです。そして、原因は様々で、適切な対処をするためには正しい診断が必要です。
今回は、熱いものがしみるメカニズムや考えられる原因について詳しく解説します。放置すると危険なサインもあるため、自分の症状と照らし合わせてみてください。
1.「熱いものがしみる」症状は歯のSOSサイン
1-1 歯の構造と痛みのメカニズム
2.虫歯以外で熱いものがしみる5つの主な原因
2-1 ①重度の知覚過敏
2-2 ②歯周病による歯茎の後退
2-3 ③歯の亀裂(マイクロクラック)
2-4 ④歯髄炎(しずいえん)
2-5 ⑤歯の治療直後による一時的な熱伝導
3.熱いものがしみるときに自分でできる応急処置
3-1 刺激を避けて安静にする
3-2 市販の鎮痛剤を活用する
4.歯科医院で行われる主な治療方法
4-1 知覚過敏の処置(コーティング剤の塗布)
4-2 咬み合わせの調整やマウスピースの作製
4-3 神経に達している場合:根管治療(神経の治療)
5.「熱いものがしみる」の放置は厳禁!
5-1 神経が死んでしまう可能性がある
6.熱いものがしみたら早めの受診を!
「熱いものがしみる」症状は歯のSOSサイン
歯が温度変化に対して敏感になる状態を「知覚過敏」と呼びますが、「熱いもの」に反応する場合は特に注意が必要です。一般的に、冷たいものよりも熱いものの方が、歯の内部にある神経に近い場所でトラブルが起きている可能性が高いからです。
歯の構造と痛みのメカニズム
歯の表面は、体の中で最も硬い「エナメル質」で覆われています。その内側には「象牙質(ぞうげしつ)」があり、さらにその内側には神経や血管が通る「歯髄(しずい)」が存在します。
象牙質には「象牙細管」という無数の小さな管が通っています。エナメル質が削れたり歯茎が下がったりして象牙質が露出すると、熱などの刺激が象牙細管を通じて神経に伝わりやすくなります。この刺激が神経を興奮させることで、痛みが生じるとされています。
虫歯以外で熱いものがしみる5つの主な原因
「虫歯ではない」と思っていても、実際には目に見えない場所でトラブルが進行していることがあります。歯そのものではなく、歯を支える組織や日々の習慣が原因となっているケースも少なくありません。
ここでは、代表的な5つの原因について解説していきます。
①重度の知覚過敏
知覚過敏は冷たいもので起こるイメージが強いですが、症状が進行すると熱いものにも反応します。これは、象牙細管を通じて神経への刺激がより強まっている証拠です。
過度なブラッシングでエナメル質が摩耗したり、酸性の強い飲食物(コーラやレモンなど)によって歯が溶ける「酸蝕歯(さんしょくし)」になったりすると、熱いものに敏感になります。
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、生活習慣による歯の摩耗が知覚過敏の一因として挙げられています。
②歯周病による歯茎の後退
歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けて歯茎が下がり、本来は歯茎に隠れているはずの「歯の根(歯根部)」が露出します。
歯根部にはエナメル質がないため、象牙質がむき出しの状態になります。熱いものがこの露出した部分に触れると、熱がダイレクトに神経へ伝わり、強い痛みを感じることがあります。
③歯の亀裂(マイクロクラック)
加齢や歯ぎしり、食いしばりなどの習慣によって、歯の表面に目に見えないほどの細かなヒビが入ることがあります。これをマイクロクラックと呼びます。
熱いものを口にすると、歯はわずかに膨張するため、ヒビがずれて神経を刺激します。特に、特定の角度で物を噛んだ時や、熱いものと冷たいものを交互に口にした時に、痛みが出やすいのが特徴です。
④歯髄炎(しずいえん)
「虫歯はない」と思っていても、過去に治療した詰め物の下で密かに虫歯が進行していたり(二次カリエス)、打撲などの衝撃によって神経が炎症を起こしたりしている場合があります。
熱いもので痛みが強く出るのは、歯髄の充血や炎症が深刻化しているサインであることが多いです。特に、「熱いもので痛み、冷たいもので少し和らぐ」という症状がある場合は、神経のダメージがかなり進んでいる可能性が高いです。この段階になると、一時的にしみるのではなく、何もしていなくてもズキズキ痛むという継続的な自発痛に変わる傾向があります。
⑤歯の治療直後による一時的な熱伝導
「最近、金属製の詰め物や被せ物をつけた」という場合、その治療が原因で一時的に熱いものがしみるケースがあります。 金属製の詰め物(インレー)や被せ物(クラウン)は熱伝導率が高く、熱いものの温度が神経にダイレクトに伝わりやすくなるからです。
また、治療の刺激で神経が一時的に過敏になっていることもあります。
通常は数日から数週間ほどで神経が慣れ、自然と治まることが多いです。痛みが強くなる場合や長引く場合は我慢せず歯科医師に相談しましょう。
熱いものがしみるときに自分でできる応急処置
痛みが強い場合、まずは歯科医院を受診するのが一番ですが、夜間や休日、お仕事の都合などですぐに行けないこともあるでしょう。そのような時に、痛みを和らげるためにできる家庭での対処法をご紹介します。
ただし、これらはあくまで一時しのぎであり、根本的な解決にはならないことを念頭に置いておいてください。
刺激を避けて安静にする
最も重要なのは、痛みが出ている部位にさらなる刺激を与えないことです。熱い飲み物や食べ物は人肌程度まで冷ましてから口にするようにし、極端に冷たいものも避けましょう。
また、痛みが気になるからといって指や舌で触るのも禁物です。炎症が起きている場合、外部からの刺激によって症状が悪化する恐れがあります。
市販の鎮痛剤を活用する
どうしても痛みが我慢できない場合は、市販の痛み止め(ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなど)を服用することも検討してください。
ただし、薬は痛みの原因を根本的に治すものではありません。薬で痛みが引いたからといって放置せず、必ず歯科医院で診断を受けるようにしましょう。また、服用に際しては薬剤師の指示や説明書を必ず確認してください。
歯科医院で行われる主な治療方法
歯科医院では、視診だけでなくレントゲンや専用の検査器具を用いて、痛みの正体を突き止めます。
原因別に行われる一般的な治療の流れについて解説します。
知覚過敏の処置(コーティング剤の塗布)
象牙質が露出していることが原因であれば、露出した象牙細管を封鎖する処置を行います。専用のコーティング剤を塗布することで、外部からの刺激を遮断します。
軽度の場合は数回の塗布で改善しますが、改善が見られない場合は、レジン(プラスチック)で露出部分を覆う治療が行われることもあります。
咬み合わせの調整やマウスピースの作製
歯のヒビや過度な負担が原因の場合、咬み合わせの調整(削合)が行われます。特定の歯に力が集中しないようにすることで、炎症を鎮めます。
また、就寝中の歯ぎしりが疑われる場合は、ナイトガード(マウスピース)を作製し、歯を保護する対策が取られます。これにより、歯へのストレスを軽減し、しみる症状を緩和させます。
神経に達している場合:根管治療(神経の治療)
歯髄炎を起こしている場合や、神経が死んでしまっている場合は、「根管治療(こんかんちりょう)」が必要です。 傷んだ神経を取り除き、歯の根の中(根管)を綺麗に消毒・洗浄した上で、薬剤を詰めて密封します。その後、被せ物を作って歯を補強し、しっかり咬めるようにします。
治療を早めに行うことで、抜歯を回避しご自身の歯を長持ちさせることが可能です。
「熱いものがしみる」の放置は厳禁!
熱いものがしみる場合、病状がかなり進行している可能性が高く、「もう少し様子を見よう」という判断は危険です。
なぜ放置してはいけないのか、そのリスクについて説明します。
神経が死んでしまう可能性がある
熱いもので歯が痛むのは、神経が限界に近いダメージを受けているサインです。これを放置すると、最終的に神経が死んでしまい、痛みを感じなくなります。
症状がなくなることで「治った」と勘違いしがちですが、そうではありません。実際には、菌が根の先まで繁殖し、顎の骨を溶かしたり、膿が溜まる「根尖性歯周炎(こんせんせいしじゅうえん)」を引き起こしたりします。こうなると、治療期間は大幅に長くなり、最悪の場合は抜歯が必要です。
歯を守るためには、神経が刺激を感じている間に適切な対処をすることが非常に重要なのです。
熱いものがしみたら早めの受診を!
熱いものがしみる原因は、知覚過敏から神経の炎症まで多岐にわたります。共通して言えるのは、この症状が出ているときは「歯がSOSを出している」ということです。
自己判断で「虫歯じゃないから大丈夫」と放置せず、早めに歯科医師の診断を受けることが、ご自身の歯を長く守ることにつながります。
もし現在、熱いものを飲むたびに症状が出ているのであれば、まずは一度、歯科を受診することをお勧めいたします。
当院では、無料カウンセリングも受け付けております。お気軽にご相談ください。