生理中の歯茎の腫れはなぜ起こる?原因と今日からできるセルフケア
監修:歯科医師 高島 光洋
「生理前になると、なぜか歯茎がムズムズしたり腫れたりする……」そんな経験はありませんか?実は、口内環境は女性ホルモンの変化と密接に関係しており、この時期特有の「月経性歯肉炎」を引き起こしている可能性があります。
この記事では、生理周期に伴う歯茎のトラブルの原因と、家庭や歯科医院でできる適切な対処法を詳しく解説します。毎月訪れるお悩みの軽減に繋がれば幸いです。
1.生理周期と歯茎の腫れの意外な関係
2.なぜ生理前に歯茎が腫れるのか?主な3つの原因
2-1 ①女性ホルモン「プロゲステロン」の影響
2-2 ②特定の歯周病菌が活発になる
2-3 ③免疫力の低下と唾液の質の変化
3.これって病気?生理中に現れやすいお口の症状
3-1 歯茎のムズムズ感と赤み
3-2 ブラッシング時の出血
3-3 口臭が気になり始める
4.生理中の「月経性歯肉炎」を悪化させないケア
4-1 柔らかめの歯ブラシで優しく磨く
4-2 デンタルフロスや歯間ブラシの併用
4-3 刺激の少ない洗口液を活用する
5.歯科医院を受診すべきタイミングとは?
6.自分のバイオリズムを知って適切に対策しよう
生理周期と歯茎の腫れの意外な関係
生理が近づくと、普段は何ともない歯茎が赤く腫れたり、ブラッシング時に出血しやすくなったりすることがあります。これらのトラブルが、多くの女性が経験する生理前の不調「月経前症候群(PMS)」に伴う症状のひとつであることは、あまり知られていません。
PMSとは、生理の3~10日ほど前から始まる精神的、あるいは身体的な症状のことで、生理が始まるとともに症状が減退または消失するのが特徴です。
イライラや眠気、胸の張りなどが有名ですが、口腔内においても炎症反応が強まることが報告されています。
なぜ生理前に歯茎が腫れるのか?主な3つの原因
生理周期に伴うお口の違和感には、主に女性ホルモンの分泌量が大きく関わっています。
そのメカニズムを、3つのポイントに絞ってお話ししていきます。
①女性ホルモン「プロゲステロン」の影響
生理前になると、黄体ホルモンである「プロゲステロン」の分泌量が増加します。このホルモンには、血管を拡張させたり、血液の透過性を高めたりする働きがあります。
日本歯科医師会等の知見によれば、プロゲステロンの影響で歯茎の毛細血管が拡張し、わずかな刺激でも炎症が起きやすくなります。これが、生理前に歯茎がブヨブヨと腫れたり、出血したりする直接的な要因のひとつです。
②特定の歯周病菌が活発になる
驚くべきことに、口の中に潜む歯周病菌の一種(プレボテラ・インターメディアなど)は、女性ホルモンを「栄養源」として好む性質を持っています。
ホルモンバランスが変化し、唾液中や歯肉溝(歯と歯茎の隙間)にこれらのホルモンが供給されると、該当の細菌が急激に増殖します。その結果、普段と同じように歯磨きをしていても、細菌の毒性に負けて歯茎が腫れてしまうのです。
③免疫力の低下と唾液の質の変化
生理前は体全体の免疫機能が一時的に低下しやすく、細菌への抵抗力が弱まります。
また、ホルモンの影響で唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥しやすくなる(ドライマウス)こともあります。
唾液には自浄作用や抗菌作用があるため、唾液が減ることで口内の自浄能力が落ち、炎症をさらに悪化させる悪循環に陥ってしまうのです。
これって病気?生理中に現れやすいお口の症状
生理に伴う歯茎の変化には、個人差はあるものの、いくつかの典型的なパターンが存在します。自分がどの症状に当てはまるかチェックしてみましょう。
基本的には生理が始まってホルモンバランスが落ち着くと、自然に症状が引いていくのが特徴です。
歯茎のムズムズ感と赤み
特定の場所、あるいは全体的に歯茎が赤紫色になり、むず痒いような違和感を覚えることがあります。これは歯肉の血流量が増えているサインです。
ブラッシング時の出血
普段通りに歯を磨いているだけなのに、歯ブラシに血がついたり、うがいをした時に赤くなったりすることがあります。組織がデリケートになっていて、少しの摩擦でも傷つきやすいためです。
口臭が気になり始める
細菌が活発になることや、唾液の減少によって、普段よりも口臭が強く感じられることがあります。自分では気づきにくい変化ですが、不快感を伴うことが多い症状です。
生理中の「月経性歯肉炎」を悪化させないケア
生理的な現象とはいえ、放置しておくと本格的な歯周病へ進行するリスクもあります。ホルモンに抗うことはできませんが、原因となる細菌を物理的に取り除くことで、炎症を最小限に抑えることが可能です。
大切なのは、「いつも以上に丁寧、かつ優しく」ケアすることです。家庭で意識すべきポイントを紹介します。
柔らかめの歯ブラシで優しく磨く
歯茎が腫れている時は、普段使っている歯ブラシが刺激になりすぎることがあります。毛先が柔らかいタイプ(ソフトやS表記のもの)を選び、マッサージするように優しく磨きましょう。
デンタルフロスや歯間ブラシの併用
歯ブラシだけでは、細菌(プラーク)の約6割しか除去できないと言われています。特にホルモンバランスで菌が活発になっている時期は、歯と歯の間のケアを徹底し、細菌の「餌」をなくすことが重要です。
刺激の少ない洗口液を活用する
アルコール成分の強いマウスウォッシュは、乾燥を助長させることがあります。生理中は低刺激(ノンアルコール)の洗口液を使用し、口の中の細菌数をコントロールしましょう。
歯科医院を受診すべきタイミングとは?
生理が終われば腫れが引くからといって、すべてを放置して良いわけではありません。時には、隠れていた問題が表面化しているケースもあります。
以下のような状況に当てはまる場合は、生理のせいだけではなく、慢性的な歯科疾患が潜んでいる可能性が高いです。早めに専門医の診断を受けることをお勧めします。
◎生理が終わっても腫れが引かない場合
通常、生理が始まれば数日で歯茎の状態は元に戻ります。もし生理が終わってからも腫れや痛みが続くのであれば、月経性歯肉炎ではなく、「慢性歯周炎」が進行していることが原因かもしれません。
◎強い痛みや膿が出る場合
単なる違和感を超えて、ズキズキと痛んだり歯茎から膿(うみ)が出たりする場合は、重度の炎症や親知らずの周囲の炎症(智歯周囲炎)が疑われます。セルフケアでの改善は難しいため、早急な処置が必要です。
◎定期検診をしばらく受けていない場合
生理前に歯茎が腫れやすい人は、もともと歯石が溜まっていたり、わずかな炎症があったりするケースが多いです。定期的なクリーニングで「ベースとなるお口の清潔度」を高めておけば、ホルモンの影響を受けても大きなトラブルになりにくくなります。
自分のバイオリズムを知って適切に対策しよう
女性の体は、一生を通じてホルモンの影響を強く受けます。生理周期による歯茎の腫れは、「今は少しデリケートな時期」という体が発しているサインでもあります。
原因がホルモンにあると理解していれば、過度に不安になる必要はありません。バランスの良い食事と睡眠を心がけ、お口のケアを丁寧にすることで、生理中の不快な症状は大幅に軽減できます。
もし、毎月の腫れが辛い、あるいはセルフケアに限界を感じているのであれば、一度歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。プロによるクリーニングを受けるだけで、生理前の違和感が驚くほど解消されることもあります。
当院では無料カウンセリングも受け付けておりますので、1人で悩まずお気軽にご相談ください。