抜歯後にできる「血餅」とは?正しく治すための知識と注意点
監修:歯科医師 高島 光洋
抜歯をした後、傷口にできるゼリー状の赤い塊を不思議に思ったことはありませんか?
これは「血餅(けっぺい)」と呼ばれるもので、抜歯後の治癒において極めて重要な役割を果たしています。
このコラムでは、血餅の正体や、抜歯後のトラブル「ドライソケット」を防ぐための生活習慣について、詳しく解説します。
1、抜歯後にできる血餅の正体と重要な役割
1-1、血餅は傷口を保護するカサブタ
2、血餅が取れるとどうなる?「ドライソケット」のリスク
2-1、骨が露出して痛むドライソケット
3、血餅を守るために!抜歯当日に避けるべきNG行動
3-1、過度なうがいは厳禁
3-2、傷口を舌や指で触らない
3-3、ストローの使用や激しい運動
4、もしも血餅が取れてしまった場合の対処法
4-1、自己判断せず、すぐに歯科医院へ連絡を
5、抜歯後の正常な経過と完了までの流れ
5-1、数ヶ月かけて骨が再生するプロセス
6、血餅は抜歯後の治癒に必要不可欠
抜歯後にできる血餅の正体と重要な役割
抜歯は、顎の骨から歯を引き抜く一種の外科的な処置です。
抜歯直後の患部をいかに保護するかが、その後の回復スピードを左右します。
血餅は傷口を保護するカサブタ
血餅とは、抜歯した後の穴(抜歯窩:ばっしか)に溜まった血液が凝固したもので、赤黒いレバーのようなゼリー状の見た目をしています。
厚生労働省の e-ヘルスネット等でも示されている通り、血餅は、血液中の血小板や凝固因子が働き、傷口を外部の細菌や刺激から守るカサブタのような役割を果たしています。
この血餅の下では、新しい組織や毛細血管が作られ、最終的には骨へと置き換わっていくため、治癒のプロセスにおいて欠かせない存在なのです。
血餅が取れるとどうなる?「ドライソケット」のリスク
血餅は非常にデリケートな存在であり、何らかの拍子に剥がれたり、十分に形成されなかったりすることがあります。
この状態を放置すると、激しい痛みを伴うトラブルに発展します。
骨が露出して痛むドライソケット
血餅が取れて、抜歯した穴の底にある顎の骨が露出してしまった状態を「ドライソケット」と呼びます。
通常、傷口は血餅で覆われることで保護されます。
しかし、何らかの要因で血餅が剥がれて骨がむき出しになると、細菌感染を起こしやすくなり、飲食の際や空気に触れるだけで耐え難い痛みが生じます。
抜歯後2〜3日経過してから痛みが強まるようなら、ドライソケットになっている場合が多いです。
痛み止めがまったく効かないほどの激痛になることもあるため、血餅を維持することは術後の経過を良くするうえで欠かせません。
血餅を守るために!抜歯当日に避けるべきNG行動
せっかくできた血餅が剥がれてしまわないように、抜歯直後の数日間は日常生活において細心の注意が必要です。
特に以下の点に気を付けてください。
過度なうがいは厳禁
口の中に血の味がすると、つい何度もゆすぎたくなりますが、これは最も血餅が剥がれやすい行為です。
強い力でうがいをすると、その水圧で血餅が簡単に洗い流されてしまいます。
抜歯当日にどうしても味が気になる場合は、口に水を含んで静かに出す程度にとどめて、ガラガラうがいやブクブクうがいは避けましょう。
傷口を舌や指で触らない
傷口が気になったり、食べかすが詰まったように感じたりしても、舌で触ったり指や爪楊枝でつついたりしてはいけません。
血餅は非常に柔らかいため、物理的な刺激ですぐに壊れてしまいます。
また、指などから細菌が入り込み、感染症を引き起こすリスクも高まります。
ストローの使用や激しい運動
ストローの使用時のように、吸い込む力によって口の中を陰圧にすると、血餅が吸い出されてしまうことがあります。
また、激しい運動や長風呂、飲酒は血流を促進させすぎて、出血が止まらなくなったり、形成されかけた血餅が押し流されたりするため、安静にするようにしましょう。
もしも血餅が取れてしまった場合の対処法
注意していても、食事や睡眠中に血餅が剥がれてしまうことがあります。
異変を感じた際に、自分で無理に対処しようとするのは危険です。
自己判断せず、すぐに歯科医院へ連絡を
・穴の中が白っぽく見える
・抜歯後数日経って痛みが強くなってきた
等の症状がみられる場合は、ドライソケットの可能性があります。
自分で市販の薬を塗り込んだり掃除したりすると悪化する恐れがあるため、歯科医院を受診してください。
歯科医院では、露出した骨の面を洗浄し、専用の軟膏を塗布したり、再度出血を促して血餅を作り直したりする処置が行われます。
早めの受診が、痛みの早期改善に繋がります。
抜歯後の正常な経過と完了までの流れ
抜歯後の穴が完全に塞がるまでには、想像以上に時間がかかります。
表面的な変化だけでなく、内部の組織がどう変化していくかを知っておくと安心です。
数ヶ月かけて骨が再生するプロセス
抜歯をした部分はは、一般的に以下のようなステップを辿って治癒していきます。
1. 当日〜3日目
血餅が形成され、傷口を密閉する。
2. 1週間〜2週間
血餅が「肉芽(にくげ)組織」に変わり、周囲の歯肉が盛り上がり始める。
3. 1ヶ月〜3ヶ月
表面の穴がほぼ塞がり、内部で新しい骨(再生骨)が作られ始める。
4. 半年〜1年
完全に周囲の骨と同化し、修復が完了する。
このように、見た目の穴が塞がるのは数週間ですが、内部の骨がしっかり出来上がるまでには長い月日を要します。
その第一歩を担っているのが血餅なのです。
血餅は抜歯後の治癒に必要不可欠
抜歯後の血餅は、あなたの大切な顎の骨を守り、新しい組織を作る基盤です。
「触らない」「うがいをしすぎない」「安静にする」というシンプルなルールを守るだけで、ドライソケットのリスクは大幅に軽減できます。
抜歯後のケア方法や注意点などを事前に把握してから抜歯に臨むようにしましょう。
もしすでに処置が済んでいて、痛みや出血に不安を感じているようなら、自分で対処せずに早めに歯科医院へご相談ください。