歯周病と歯肉炎の違いとは?歯茎の腫れ・出血などの症状の違いを解説
監修:歯科医師 高島 光洋
「歯茎が腫れて痛い」「歯磨きすると血が出る」──そんなとき、多くの方が「もしかして歯周病?」と不安に思うでしょう。実は、その症状、歯周病の前段階である「歯肉炎」の可能性もあります。この2つは似ていますが、進行度と治療法がまったく異なる病気です。違いを理解することが、歯を守る第一歩になります。
この記事では、歯科医院の視点から、
・歯肉炎と歯周病(歯周炎)の違い
・見分け方
・治療や予防のポイント
をわかりやすく解説します。
1.「歯周病」は歯肉炎と歯周炎の総称
2.症状で見分ける:あなたはどちらの段階?
2-1 歯周病に進行しているかもしれないサイン
3.治療とケア:歯肉炎は「治る」、歯周病は「止める」
3-1 歯肉炎:歯磨きとお掃除でケア可能
3-2 歯周病(歯周炎):専門的治療が必要
4.歯肉炎・歯周病を防ぐ3つの習慣
5.歯周病は「全身の健康」にも関係
6.一生自分の歯で過ごすために、早めのチェックを心がけましょう
「歯周病」は歯肉炎と歯周炎の総称
「歯周病」は、歯を支える組織(歯茎・歯根膜・歯槽骨)に炎症が起きる病気の総称です。
その中に「歯肉炎」と「歯周炎(いわゆる歯周病)」が含まれています。
<歯肉炎>
・炎症の範囲:歯茎(歯肉)だけに炎症がある
・特徴:初期段階。骨の破壊はなし
<歯周炎(歯周病)>
・炎症の範囲:炎症が骨(歯槽骨)にまで及ぶ
・特徴:中~重度。骨の破壊があり、歯を失う恐れがある
つまり、「歯肉炎は歯周病の“入口”」であり、この段階で止められるかどうかが、歯周病が進行するかどうかの分かれ道となります。
症状で見分ける:あなたはどちらの段階?
歯肉炎と歯周炎は、症状によってある程度見分けがつきます。
| 歯肉炎 | 歯周炎 | |
| 炎症の範囲 | 歯茎だけ | 歯茎、骨 |
| 主な症状 | ・赤み ・腫れ ・出血 |
・膿 ・口臭 ・歯のぐらつき |
| 痛み | ほとんどなし | 痛み、違和感が生じる場合もある |
| 骨の破壊 | なし | あり(歯槽骨が溶ける) |
| 歯周ポケットの深さ | 2~3mm | 4mm以上(6mm以上は重度) |
歯周病に進行しているかもしれないサイン
- 歯茎から膿が出る
- 口臭が強くなった
- 歯がグラグラする
上記の症状が出ている場合、骨の破壊が始まっている可能性が高いです。
歯周病は痛みがほとんどないまま進行するため、「サイレント・ディジーズ(静かなる病気)」とも呼ばれています。
この「静かな進行」こそが、歯周病の最も恐ろしい点です。歯肉炎の段階であれば、丁寧なブラッシングで健康な状態に戻すことが可能ですが、一度骨が溶け始める「歯周炎」まで進むと、失われた組織を元通りに再生させることは非常に困難になります。
そのため、体が出している危険信号を見逃さず、早めに対処することが、歯周病治療において非常に重要です。
治療とケア:歯肉炎は「治る」、歯周病は「止める」
歯肉炎:歯磨きとお掃除でケア可能
歯肉炎の原因はプラーク(歯垢)です。
歯磨きや歯間ブラシでプラークを除去すれば、炎症は2〜3週間ほどで改善が見込めます。
<治療法>
- 正しいブラッシング(毛先を歯と歯茎の境目45°にあてて、優しく小刻みに動かす)
- 歯間ブラシ・デンタルフロスの併用(歯ブラシの毛先が届きにくい歯と歯の間は、補助ツールを活用して磨く)
- 歯科医院でのスケーリング(歯石が付いている場合は歯ブラシでは落とせないため、歯科医院にて除去する必要がある)
歯周病(歯周炎):専門的治療が必要
歯周病になっている場合、セルフケアだけでは改善しません。歯肉炎と同様のケアに加え、歯周ポケットの奥深くにこびりついた細菌の塊(バイオフィルム)や歯石を取り除く専門的な治療が必要です。
<治療法>
- スケーリング・ルートプレーニング( 専用器具で歯周ポケット深部の汚れを除去し、歯の表面をツルツルに整えて汚れを付きにくくします)
- 外科処置(フラップ手術:器具が届かない深部の汚れに対して、歯茎を小さく切開して直接アプローチします)
- 歯周組織再生療法(溶けてしまった骨などの組織を、特殊な薬剤等を用いて再生させます)
歯周病は自然に治ることはありません。放置をしていると歯を失うリスクが高まるため、早期の専門的な治療が不可欠です。
歯肉炎・歯周病を防ぐ3つの習慣
1.プラークコントロール
毎日の丁寧なブラッシングが最重要。歯間清掃具も使いましょう。
2.禁煙
喫煙は血流を悪化させ、歯周病のリスクを数倍に高めます。
3.定期検診
1~3ヶ月に一度のクリーニングで、再発を防ぎましょう。
特に注意したいのが、ご自身では落としきれない「歯石」の存在です。歯垢が石灰化した歯石は、いわば細菌の温床であり、一度付着すると歯ブラシではびくともせず、そこを拠点に毒素を出し続けます。
歯科医院での定期的なメンテナンスは、この「セルフケアの限界」を補うために欠かせません。数ヶ月に一度、プロの専用器具でリセットすることで、再発のリスクを最小限に抑えられます。
歯周病は「全身の健康」にも関係
歯周病菌が血流に入ると、
- 心筋梗塞・脳梗塞
- 糖尿病
- 動脈硬化
- 早産・低体重児出産
などのリスクを高めることがわかっています。
つまり、口の中の炎症は全身の疾患に繋がるということです。そういった意味でも、歯周病の早期治療は非常に大切と言えるでしょう。
一生自分の歯で過ごすために、早めのチェックを心がけましょう
もし、次のような症状を感じているのであれば、できるだけ早く歯科医院へご相談ください。
◆歯磨きで出血が続く
◆歯茎が腫れている
◆口臭が強い
◆歯がグラグラする
歯肉炎は、早期なら健康な歯茎を取り戻せます。
しかし、歯周病になってしまうと、時間とともに悪化し、治療の期間も長くなってしまいます。
当院には、歯周病で悩まれている患者様が多く来院されています。歯茎に異常を感じたときは、いつでもお気軽にご相談ください。