その歯痛、副鼻腔炎が原因かも?歯科医師が解説する見分け方と対処法
監修:歯科医師 高島 光洋

何もしていないときでも上の奥歯がジンジン痛む感じがする」
「走ったときに奥歯がズーンと響く感じがする」
「虫歯かと思って歯医者に行ったのに、特に異常はないと言われた」
そんな症状があった場合、“副鼻腔炎(蓄膿症)”が原因かもしれません。
副鼻腔炎とは、顔の中にある「副鼻腔」と呼ばれる空洞に炎症が起こり、膿がたまってしまう病気です。この副鼻腔の炎症が、上の奥歯の痛みや違和感として現れることがあるのです。
今回は、歯科医師の視点から「副鼻腔炎による歯痛の特徴」と「正しい対処法」について詳しく解説します。
1.副鼻腔炎で歯が痛くなる理由
2.こんな歯の痛みは副鼻腔炎かもしれません
2-1上の奥歯が痛む
2-2体を動かすと鈍い痛みを感じる
2-3鼻づまりや鼻水、顔の圧迫感がある
2-4歯科の検査では異常が見つからない
3.副鼻腔炎による歯の痛み…どう対処すれば良い?
3-1耳鼻科での診断と治療を受ける
3-2歯科での検査も並行して行う
3-3体調管理・生活習慣の改善
4.歯の痛み、気になる症状は早めに当院へご相談ください
副鼻腔炎で歯が痛くなる理由
副鼻腔は、目の下や鼻の周囲、額の奥などにある空洞で、上顎洞(じょうがくどう)・前頭洞(ぜんとうどう)・篩骨洞(しこつどう)・蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という4つの部位に分かれています。
このうち、「上顎洞」は上の奥歯の真上に位置しており、歯の根と非常に距離が近いです。そのため、副鼻腔炎で上顎洞に炎症が起こると、その炎症が歯の神経や歯の周囲組織に影響を及ぼし、歯の痛みとして感じられることがあります。
特に、風邪をひいたあとやアレルギー性鼻炎の悪化、季節の変わり目などに副鼻腔炎を発症し、気づかないまま「歯が痛い」という症状を訴えて来院される方もいらっしゃいます。
こんな歯の痛みは副鼻腔炎かもしれません
副鼻腔炎が原因の歯痛には、いくつかの特徴があります。
上の奥歯が痛む
副鼻腔炎による歯痛は、上顎洞に隣接しているため上の奥歯に痛みが出ることが多いです。虫歯や歯周病の症状が見られないにもかかわらず痛みます。
体を動かすと鈍い痛みを感じる
走ったり、頭を前に倒したり、身体を横にして寝た時などに、歯や頬に「ズーン」と鈍痛が響くような感覚になることがあります。
これは、体の動きや向きによって副鼻腔内の膿が動き、圧力が変わるためです。
鼻づまりや鼻水、顔の圧迫感がある
副鼻腔炎になると、鼻づまりや鼻水、目の下や頬の痛み・圧迫感を伴うことが多いです。これらの症状が歯の痛みと同時にある場合は、副鼻腔炎の可能性が高くなります。
歯科の検査では異常が見つからない
歯科医院でレントゲンを撮ったり、虫歯や歯周病の検査をしたりしても「問題がない」と言われた場合は、副鼻腔炎が原因であることが疑われます。
副鼻腔炎による歯の痛み…どう対処すれば良い?
歯の痛みの原因が副鼻腔炎だと、いくら歯を治療しても根本的な解決にはなりません。原因である副鼻腔の炎症を抑えることが最も重要な対処法です。
耳鼻科での診断と治療を受ける
なるべく早く耳鼻咽喉科を受診し、CT検査やファイバースコープなどで副鼻腔の状態を調べてもらいましょう。抗生物質や抗炎症薬、点鼻薬などを使って副鼻腔内の炎症を抑えることで、歯の痛みも次第に軽減されます。
歯科での検査も並行して行う
歯の痛みを感じている場合、副鼻腔炎と似た症状を起こす歯の疾患もあるため、歯科での検査も欠かせません。
虫歯や歯周病が進行していたり、歯の根っこの部分が破折していたり、歯の根の先に膿がたまっていたりすることが原因で症状が出ている可能性もあるので、歯科も受診することをおすすめします。
体調管理・生活習慣の改善
副鼻腔炎は、風邪やアレルギーが原因となって発症することが多いため、日頃から体調管理に努めることも大切です。
規則正しい生活・十分な睡眠・栄養・水分補給・禁煙など、日常生活を見直して免疫力を高めると良いでしょう。免疫力を高めて炎症を落ち着かせることができれば症状が軽減されます。
歯の痛み、気になる症状は早めに当院へご相談ください
副鼻腔炎による歯痛は、ご自身で判断することが難しいです。そのため、もしも症状が気になったら、まず歯科医院を受診するようにしましょう。歯科ではレントゲン撮影や口腔内の診察を通じて、歯の痛みが虫歯なのか、それ以外の要因なのかを診断することができます。
大切なのは、痛みの原因を正確に特定し、迅速かつ的確な処置を受けることです。歯に痛みや違和感がありましたらお気軽に当院へご相談ください。