銀歯の下が虫歯に!原因と早期発見・治療のポイント

監修:歯科医師 高島 光洋
銀歯の下に虫歯ができることをご存知ですか?一度治療したからといって、油断は禁物です。銀歯の接着部分の境目に隙間ができたり、接着に使われたセメントが劣化したり、銀歯自体が経年劣化することで、再び虫歯になってしまうことがあるのです。虫歯を防ぐためには、日々の丁寧なセルフケアに加え、定期的な歯科検診を受けることが欠かせません。
今回は、銀歯の下に虫歯ができるリスクと、その予防・対策について詳しく解説します。
1.銀歯の下に虫歯ができる原因とは?
1-1 ①銀歯と歯の隙間に細菌が入り込みやすくなる
1-2 ②銀歯は汚れがつきやすく、酸化・腐食しやすい
1-3 ③銀歯の経年劣化
1-4 ④銀歯の温度変化による膨張・収縮
1-5 ⑤治療後の虫歯の再発
1-6 ⑥銀歯の下の虫歯は発見が難しい
2.銀歯の下の虫歯を早期発見する方法
2-1 ①二次虫歯の「サイン」を見逃さない
2-2 ②歯科医院で定期検診を受ける
3.銀歯の下の虫歯を放置するとどうなる?
4.銀歯の下の虫歯の治療法
4-1 ①基本的な治療法
4-2 ②歯の神経の治療が必要になることも
4-3 ③抜歯が必要な場合の選択肢
5.銀歯の下の虫歯を予防する方法
5-1 ①正しい歯磨き習慣を身につける
5-2 ②デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
5-3 ③定期的な歯科検診を受ける
5-4 ④食生活を見直す
5-5 ⑤被せ物を他の素材に変更する
6.銀歯の下の虫歯を予防し、早期発見・治療を!
銀歯の下に虫歯ができる原因とは?
一度治療した歯でも、銀歯の下が虫歯(=二次虫歯)になることがあります。ここでは、その主な原因についてお伝えします。
①銀歯と歯の隙間に細菌が入り込みやすくなる
銀歯は、歯科用の接着剤(セメント)を使ってご自身の歯に固定します。
接着部分は、治療直後はしっかりと密着した状態が保たれていますが、接着剤は時間の経過とともに劣化していきます。そのため、おおよそ4〜5年ほどで、歯と銀歯の境目には目に見えない小さな隙間が生じるようになります。
この隙間ができることで、食べかすや細菌が銀歯の下に侵入し、やがて虫歯が再発してしまうのです。特に、この部分は歯ブラシが届きにくく清掃が難しいため、プラークや細菌が溜まりやすい傾向があります。
②銀歯は汚れがつきやすく、酸化・腐食しやすい
ブラッシングや食事などの刺激により、銀歯の表面には微細な傷がつきます。その結果、汚れが付着しやすくなり、さらに、歯みがきが不十分だと歯垢(プラーク)が蓄積して虫歯や歯周病のリスクが高まります。
また、銀歯は口腔内の湿気や唾液に含まれる成分と反応し、酸化や腐食を起こすことがあります。酸化によって銀歯が劣化すると、歯との接合部に隙間が生じます。この隙間から水分が入ったり隙間がさらに広がったりすることで、接着力が弱まり、細菌が侵入しやすい状態となるのです。
③銀歯の経年劣化
銀歯の寿命は一般的に約5〜7年とされていて、経年劣化によって摩耗や変形が生じることがあります。日常生活における噛み合わせの力や食事による衝撃によって、銀歯がわずかに動き、その結果、歯との接合部に隙間ができます。この隙間に食べかすや細菌が入り込むことで、銀歯の下で虫歯になってしまうのです。
④銀歯の温度変化による膨張・収縮
銀歯は、熱い飲み物や冷たい食べ物を摂取すると膨張や収縮を繰り返します。銀歯と天然歯とでは熱膨張の性質(熱膨張係数)が異なるため、この温度変化の繰り返しによって銀歯と天然歯の接合部に微小なズレが生じることがあります。先述したように、この隙間は細菌の感染経路であり、虫歯の再発リスクが高まります。
⑤治療後の虫歯の再発
治療時に細菌感染した部分を完全に除去できなかった場合、銀歯の下には細菌が残ることになります。銀歯と歯の間に隙間が生じた場合には、そこから細菌が侵入して銀歯の下で虫歯が再発・進行することがあります。
また、虫歯の治療時に、虫歯菌に感染した部分を完全に除去できていない状態で銀歯を付けてしまうことが稀にあります。つまり、虫歯菌が残っていることによって、銀歯の下で虫歯が進行してしまうのです。一度銀歯を付けると、中の状態は外から見えにくく、自覚症状も乏しいため、発見が遅れやすいです。
⑥銀歯の下の虫歯は発見が難しい
銀歯の下にできた虫歯を発見するのが難しいことには、いくつかの理由があります。
まず、神経を取り除いた歯は痛みを感じにくく、自覚症状がほとんど現れません。そのため、気づかないうちに虫歯が進行してしまうケースがあります。
また、銀歯はX線(レントゲン)を遮断する性質があるため、銀歯と重なっている部分はレントゲン撮影をしても映らないという問題があります。
そのため、虫歯がレントゲンで確認できるようになったときには、すでにかなり進行している場合が多いのです。
銀歯の下の虫歯を早期発見する方法
銀歯の下の虫歯を早期に発見するためには、サインを見逃さないことと、定期的な検診が重要です。
①二次虫歯の「サイン」を見逃さない
以下のような症状が見られた場合、銀歯の下で虫歯が進行しているかもしれません。
<銀歯の周辺がザラザラする>
歯磨き時に銀歯の周囲がザラつく場合、隙間にプラークが蓄積していると考えられます。
<変色>
黒ずみや白濁が見られる場合は、銀歯の下で虫歯が進行している場合があります。
<冷たいものや甘いものがしみる>
銀歯に隙間ができ、そこから刺激を感じていると考えられます。
<噛むと痛い>
噛んだ時に銀歯の下の虫歯が圧迫されて症状が出ている場合があります。
<銀歯がぐらつく>
銀歯の下の虫歯が原因で接着力が弱まり、銀歯が取れかかっている場合があります。
<口臭が気になる>
口内の細菌が増加していると口臭を感じることがあります。、特に銀歯の下に食べ物が詰まって腐敗している時にその傾向が強いです。
上記のような症状がある場合は、銀歯の下で虫歯になっているかもしれません。。歯科医院で検診を受けることをお勧めします。
②歯科医院で定期検診を受ける
定期的な歯科検診は、虫歯や歯周病をはじめとした口腔内の潜在的なトラブルを早期に発見するために不可欠です。
特に銀歯はX線(レントゲン)を通しにくいため、小さな虫歯をレントゲン検査だけで発見するのが難しい場合があります。そのため、拡大鏡やマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)などを使用して、銀歯の周囲や下部をより詳細に観察することがとても重要です。
これにより、虫歯を初期の段階で見つけて治療を行うことが可能となり、歯の寿命を延ばすことにつながります。
歯の健康を長く維持するためにも、定期的なチェックと早期対応を行いましょう。
銀歯の下の虫歯を放置するとどうなる?
銀歯の下にできた虫歯を放置すると、さまざまな問題が生じます。
虫歯が進行して神経に達すると、激しい痛みや感染を引き起こし、根管治療(歯の神経の処置)が必要になることがあります。
また、虫歯が進むことで銀歯が外れやすくなり、最悪の場合には歯が折れたり欠けたりすることもあります。
さらに、虫歯菌の感染が周囲の歯や歯周組織、顎の骨にまで広がり、隣接する歯にも影響が及んで、歯周病や他の歯の虫歯リスクも高まります。
虫歯を放置したままにすると、簡単な治療では済まず、抜歯やインプラントといった大掛かりで高額な治療が必要になるケースもあります。これらの治療は費用がかさむだけでなく、通院期間も長くなります。
そのため、定期的な検診と早期発見・早期治療が非常に重要です。気になる症状がある場合は、なるべく早めに歯科医院を受診しましょう。
銀歯の下の虫歯の治療法
銀歯の下の虫歯の治療方法をご紹介します。
①基本的な治療法
基本的な治療の流れは以下の通りです。
- X線撮影を行い、虫歯の位置や大きさを確認します。
- 銀歯を慎重に取り外し、虫歯に感染している部分を完全に除去します。健康な歯の組織が多く残せるように注意深く進めます。
- 虫歯を除去した後、歯の機能を回復するために、新たな詰め物や被せ物を作成します。
詰め物や被せ物は、保険診療と自由診療とで材質が異なります。材質によっては虫歯のリスクをさげることができるものもあるため、歯科医師と相談しながら決めましょう。
②歯の神経の治療が必要になることも
銀歯の下で虫歯が進行して歯の神経に達した場合、根管治療が必要になることがあります。
<根管治療が必要となるケース>
・歯髄に細菌感染が及んでいる場合
・歯髄炎や歯根端周囲炎など、歯根の周囲の組織に炎症が見られる場合
<治療内容>
・感染した組織を除去します。
・根管内の清掃と消毒を行います。
・清潔な状態の根管を無菌の材料で充填し、外部からの細菌侵入を防ぎます。
・根管治療後は歯が弱くなるため、被せ物を用いて歯を補強します。
<治療期間・費用の目安>
根管治療には4〜6回ほど回数がかかります。
費用は治療の複雑さや使用材料によって異なりますが、一般的に1500円から3000円程度です。しかし、自由診療の場合は5万円〜20万円程度かかることがあります。
根管治療は複雑な治療のため、専門的な知識と経験を持つ歯科医師による精密な処置が必要です。
③抜歯が必要な場合の選択肢
重度の虫歯、進行した歯周病、深い亀裂や破損が見られる場合は、抜歯が必要です。
抜歯後は、しっかり噛めるようにするために、以下のような方法で歯を作っていきます。
○部分義歯や総義歯
いわゆる入れ歯で、取り外しが可能です。歯を削りたくない場合や全歯欠損の場合に適用されます。
○ブリッジ
隣接する健康な歯を支えにして人工歯を固定します。見た目は自然ですが、支えとする歯に負担がかかります。
○インプラント
人工歯根としてチタン製のネジを顎骨に埋め込み、その上に歯を作っていきます。自然な使用感と審美性を補うことが可能です。
治療法の選択には、患者様の口腔内の状態や生活スタイル、予算を考慮し、歯科医師との相談が必要です。
銀歯の下の虫歯を予防する方法
日常の正しいケアと定期的な歯科検診を通じて、虫歯のリスクを減らし、健康な歯を維持しましょう。
①正しい歯磨き習慣を身につける
正しい歯磨き習慣を身につけることは、銀歯を守ることにつながります。
<銀歯の周囲を丁寧に磨く>
銀歯と歯茎の境目は汚れが溜まりやすいです。歯ブラシを45度の角度で歯茎に当てて細かく動かし、優しくブラッシングしましょう。
<柔らかめの歯ブラシを使用>
銀歯や歯を傷つけないように、柔らかめの歯ブラシを選ぶことがおすすめです。硬いブラシは歯茎を傷つけ、銀歯に微細な傷をつけるリスクがあります。
<フッ素配合の歯磨き粉を使用>
虫歯予防効果が高いフッ素配合の歯磨き粉を使用することで、酸による歯質の溶解を防ぐことができます。
このように、正しい歯磨きを習慣づけることで、銀歯の周囲を清潔に保ち、虫歯や歯周病のリスクを低減することができます。歯磨きの仕方が不安な場合は、歯科医院で相談してみましょう。
②デンタルフロスや歯間ブラシを活用する
デンタルフロスと歯間ブラシの使用は、通常の歯ブラシでは届きにくい部分の汚れの除去に効果的です。それによって、虫歯や歯周病のリスクを大幅に減少させることができます。
○デンタルフロスの特徴と使い方
<特徴>
デンタルフロスは、歯と歯の間、特に銀歯と隣接する歯との間に挟まった食べ物のプラークを除去するのに適しています。
細い糸状の素材でできており、歯と歯の間や銀歯の下の隙間に滑り込ませることができます。
<使い方>
約45センチのフロスを切り取り、両端をそれぞれ両手の指先に巻きつけます。
糸の中間部分を歯と歯の間にゆっくりと挿入し、歯の根元に沿って優しく上下に動かします。
使用する際にフロスが歯や歯茎に強く当たらないよう注意しましょう。
○歯間ブラシの特徴と使い方
<特徴>
歯間ブラシは、歯と歯の間や銀歯の周りの歯茎のラインに沿って溜まるプラークや食べかすを取り除くのに適しています。
フロスよりも大きな隙間に適しており、銀歯の境目や歯茎の溝の掃除に効果的です。
<使い方>
歯間ブラシにはサイズがあり、適切なサイズのものを使用する必要があります。無理に入れると歯茎を傷つけてしまう恐れがあるため、歯科医師や歯科衛生士にサイズを確認してもらうようにしましょう。
ブラシを歯間に軽く押し込み、そっと前後に動かしてプラークや食べ物の残りを掻き出します。歯茎に刺さないよう角度に注意してください。
使用後は、ブラシを水でよく洗い流し、清潔に保ちます。
デンタルフロスと歯間ブラシを日常的に使うことで、銀歯の健康を長持ちさせ、全体的な口内の状態を保つことができます。
③定期的な歯科検診を受ける
定期的な歯科検診は、口内健康を保ち、見えにくい部分の問題を早期に発見するために非常に重要です。
検診では、虫歯や銀歯の劣化、歯周病の状態など、お口の中全体の確認を行います。定期的に行うことで、万が一トラブルがあったとしても大きく進行する前に対応することができます。
また、歯科衛生士によるクリーニングでは、普段のブラッシングでは除去できない頑固なプラークや歯石を取り除き、歯周病や虫歯の予防処置を行います。一般的には半年に1回の検診が推奨され、健康な歯を維持し治療のリスクを減らします。
④食生活を見直す
食生活の見直しは、銀歯を含む全ての歯の健康にとって重要です。特に、糖分の摂取量の見直しをお勧めいたします。甘い食べ物や飲み物は口内の細菌によって酸に変えられ、虫歯に繋がりやすいからです。間食を減らし、食後は口をすすぐか歯を磨くことが効果的とされています。
また、硬いものや粘着性のある食べ物も銀歯が取れてしまう恐れがあるため、摂取を控えるといいでしょう。このように食習慣を見直すことで、二次虫歯のリスクを減らし、歯の健康を長期にわたって維持することが可能です。
⑤被せ物を他の素材に変更する
最近、審美や健康への配慮から、詰め物や被せ物に使用する材質を金属以外のものにするする人が増えています。代替素材としては、セラミック、コンポジットレジン、ジルコニアなどが挙げられます。
<セラミック>
自然な色合いで、虫歯リスクが低く、美しい見た目が特徴です。しかし、価格が高く対向歯に摩耗を与える可能性があります。
<コンポジットレジン>
色調調整が容易で価格が手頃ですが、耐久性が低く汚れが付着しやすいです。
<ジルコニア>
硬度と耐久性に優れ、自然な見た目を長期間維持することができますが、価格が高くなります。
これらの素材は金属アレルギーのリスクも低いため、多くのメリットがあります。
銀歯の下の虫歯を予防し、早期発見・治療を!
銀歯の下にできる虫歯は目に見えにくく、気づかないうちに進行しやすいため、早期の対応が非常に重要です。
定期的に歯科検診を受けることで、銀歯の下の虫歯をはじめとした口腔内のトラブルを早期に発見し、適切に対処することができます。X線検査や視診を通じて銀歯の状態を詳細にチェックし、必要に応じて早めに治療を行いましょう。
また、毎日の正しいブラッシングは虫歯予防には欠かせません。特に銀歯の周囲や境界部分は汚れがたまりやすいため、丁寧な清掃が必要です。
こうした日々のケアと定期的なチェックを習慣化することで、銀歯を含むお口全体の健康を長期にわたって維持することが可能になります。