舌がヒリヒリする時の対処法と考えられる病気について
監修:歯科医師 高島 光洋
舌がピリピリと痛む、あるいはヒリヒリとした感覚が続くことは、決して無視できない症状です。この不快な感覚の背後には、さまざまな原因が潜んでいる可能性があります。舌は単なる味覚器官ではなく、全身の健康状態を映し出す重要な部位です。この記事では、舌に痛みを感じたときに注意すべきポイントや、考えられる病気についてご紹介します。
1.まずは舌の状態を確認しよう
1-1口内炎、傷、できものなどがある場合
1-2目立った変化が見られない場合
2.あまり知られていない「舌痛症」とはどんな病気?
3.舌痛症以外の舌の病気
3-1舌に症状が出ることのある全身疾患
4.舌の症状が気になったら歯科医院へご相談ください
まずは舌の状態を確認しよう
舌に違和感や痛みがある場合、舌の状態を確認することが大切です。舌は、ご自身の健康状態を映し出す一つの指標になります。以下に、注目すべきポイントをお伝えするので、セルフチェックしてみましょう。
<確認ポイント>
- 色:健康な舌はピンク色をしていますが、赤くなっていたり白っぽくなっていたりする場合は、何らかの異常があるかもしれません。例えば、白い苔のようなものが舌に付着している場合、口腔カンジダ症などの感染症が疑われます。
- 形状:通常、舌の表面は滑らかです。ひび割れていたり、地図状に模様ができていたりする場合は、栄養不足や免疫系の異常を示していることがあります。
- 表面の状態:舌の表面に潰瘍や赤い斑点が見られる場合は、口内炎や他の炎症が原因である可能性があります。また、舌が腫れている場合は、アレルギー反応や感染症の兆候かもしれません。
- 味覚の変化:舌の異常が味覚に影響を与えることがあります。味がしない、または変な味がする場合は、何か問題が起きている可能性があります。
口内炎、傷、できものなどがある場合
お口の中を確認した際に、口内炎や傷、できものがあるようなら、それが原因でヒリヒリとした痛みが生じているのかもしれません。このような場合は、傷口に軟膏を塗布することや、刺激の強い食べ物や飲み物を避けることで、通常は数週間程度で症状が和らぎます。
それでも痛みがなかなか改善しない場合は、他の病気の可能性も考えられますので、早めに口腔外科の標榜がある歯科医院を受診することをお勧めします。
目立った変化が見られない場合
舌に目立った変化が見られないのに痛みや灼熱感が続く場合は、舌痛症の可能性があります。舌痛症は、外見上は健康に見えるにもかかわらず、舌や口の中に強い痛みや不快感を感じる病気です。鏡で確認しても腫れや色の変化、潰瘍などの目に見える異常がないのに、舌がヒリヒリした症状や焼けるような感覚が続く場合は、この病気が疑われます。
舌痛症の痛みは一時的なものではなく、長期間にわたって持続することが多く、痛みの強さや感じ方は人によってさまざまです。
あまり知られていない「舌痛症」とはどんな病気?
舌痛症は認知度の低い病気で、、主な症状は舌や口の中の痛みです。この病気は、原因がはっきりとわかっておらず、診断や治療が難しいことがあります。特に中高年の女性に多く見られるとされていますが、男女問わず発症する可能性があります。
<舌痛症の特徴>
〇痛みや灼熱感
舌や口の中がヒリヒリと焼けるような痛みを感じることがあります。痛みの強さは軽いものから強いものまでさまざまで、チクチクとした感覚や鋭い痛みを伴うこともあります。
〇特定の時間帯に悪化
痛みは、朝よりも午後や夜にかけて強くなる傾向があります。
舌痛症の原因としては、神経の異常や口腔内のホルモンバランスの変化、さらには心理的なストレスや不安が関与していると言われています。
舌痛症以外の舌の病気
舌痛症の他に、舌の病気には以下のものがあります。もし、舌に異常を感じた場合は、早めに歯科医や医師に相談しましょう。
〇地図状舌(ちずじょうぜつ)
地図状舌は、舌の表面に地図のような模様ができる病気です。模様は白い境界線に囲まれていることが多く、模様の部分は赤くなり、表面の状態は滑らかです。まれに痛みを伴うことがありますが、ほとんど症状はありません。多くの場合、自然に治ります。
〇口腔カンジダ症
口腔カンジダ症は、カンジダ菌というカビの一種が口腔内で増殖することで引き起こされる感染症です。ガンジダ菌は常在菌と呼ばれ、体が健康な状態でも口の中に存在していますが、免疫力の低下、抗生物質やステロイドの長期服用により増殖しやすくなります。舌に白い斑点や膜が現れたり、痛みや灼熱感を伴ったりするなどの症状があります。大きな特徴としては、白い部分が剥がれやすく、剥がれた部分は赤みを帯びていることです。この特徴は、「白板症」と見分ける場合にも使われます。治療法は、抗真菌薬の服用や口腔ケアなどが行われます。
〇口腔白板症
口内の粘膜や舌の上皮が厚みを増して白くなっている状態を言います。舌の場合は、側面にできる確率が高いです。痛みを伴うことが少ないためご自身では気づきにくく、歯科医院での診察やクリーニングなどで気づかれる場合が多いです。原因としては、お口に合っていない被せものや詰め物、入れ歯が粘膜や舌に当たって刺激を受けることや、加齢や体質、喫煙などが挙げられます。口腔白板症は、癌の前兆になる場合もあります(前癌病変:ぜんがんびょうへん)。
〇舌癌
舌癌は、舌の表面や側面に発生する悪性腫瘍です。特に、側面に発生する確率が高いです。初期症状としては、治らない潰瘍やしこり、異常な出血などが見られます。痛みがないこともありますが、進行すると痛みを伴ったり、会話や飲み込みが困難になることがあります。喫煙や飲酒がリスク要因とされています。
〇鉄欠乏性貧血による舌炎
鉄欠乏性貧血の一症状として、舌の表面が平滑で赤くなる「ハンター舌炎」があります。舌が痛むこともあり、鉄分の摂取で症状が改善されることがあります。
舌に症状が出ることのある全身疾患
1. 鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血は、舌が平滑で赤くなり、「ハンター舌炎」と呼ばれる症状が見られることがあります。舌が痛んだり、味覚が鈍くなったりすることもあります。
2. ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12が不足すると、舌が赤く腫れたり、平滑になったりすることがあります。この状態を「萎縮性舌炎」と呼びます。症状としては、舌の表面が滑らかで光沢を呈し、痛みを伴うことがあるのが特徴です。
3. 糖尿病
糖尿病患者では、口腔内の免疫が低下するため、舌にカンジダ症などの感染症が起こりやすくなります。また、口腔乾燥症(ドライマウス)や味覚異常が現れることもあります。
4. シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、免疫系が唾液腺や涙腺を攻撃する自己免疫疾患で、口腔乾燥症(ドライマウス)を引き起こします。これにより、舌が乾燥し、ひび割れや痛みを伴うことがあります。
舌の症状が気になったら歯科医院へご相談ください
舌に違和感や痛みが続く場合や、何か気になる症状があるときは、早めに歯科医院へご相談ください。舌の異常は全身の健康状態を映し出す指標となり、早めに原因を特定することで対処方法を見つけたり、適切な治療を受けたりすることが可能になります。特に見た目に異常がなくても、痛みや不快感がある場合は、放置せずに歯科医師に相談することをおすすめします。気になる症状があれば、一度歯科医院での診察を受けてみましょう。