総入れ歯の違和感を感じる方へ。上顎の不快感を解消する最善の方法とは?
監修:歯科医師 高島 光洋

「上の総入れ歯にどうしても違和感があって慣れない……」
そんな悩みを抱えていませんか?
食事のたびに不安を感じたり、会話中に入れ歯が気になって思い切り笑えなかったり…。上の総入れ歯の違和感は、多くの患者さんが共通して経験すると言っても過言ではありません。そして、改善することはできないと思って諦めてしまっている方も多くいらっしゃいます。
しかし、適切な対策を知ることで、総入れ歯の不快感は大きく改善可能です。
この記事では、上顎に総入れ歯を装着することで生じる違和感の原因と、快適に使い続けるための解決策について詳しく解説します。
1.なぜ上顎の総入れ歯は違和感が強くなりやすいのか?
2.違和感を放置してはいけない理由
3.上顎の総入れ歯の違和感を改善する方法
3-1 ①歯科医院での定期的な調整を受ける
3-2 ②自己判断で削らない
3-3 ③徐々に慣らしていく
3-4 ④入れ歯のお手入れを欠かさない
4.違和感を抑える「自費診療」の選択肢
5.快適な入れ歯生活を送るために
なぜ上顎の総入れ歯は違和感が強くなりやすいのか?
上顎に装着する総入れ歯は、歯ぐきだけでなく「口蓋(こうがい)」と呼ばれる上顎の内側全体を覆う構造になっています。この構造によって、以下のような感覚の変化が起こりやすいです。
〇口の中の異物感
上顎に厚みのある総入れ歯が入ると、舌や口蓋が触れる感覚がこれまでとまったく違って感じられます。喉の奥に近いところまで入れ歯で覆われることで、嘔吐反射を引き起こしてしまうケースも少なくありません。
〇舌の動きが制限される
上顎の総入れ歯によって舌の動きが制限され、「さ行」や「た行」などの発音が不明瞭になったり、話しづらくなったりすることがあります。会話にストレスを感じる原因にもなります。
〇食べ物の味が変わる
総入れ歯で口蓋が覆われると、味や温度の感覚が鈍くなることがあります。これは、味覚や熱の伝わり方が制限されるためで、「食べ物の味がわかりにくい」と感じる方もいます。
〇咬みにくさ・不安定感
上顎の総入れ歯がぴったり合っていないと、食事の際にズレたり浮いたりしてしまいます。これが違和感だけでなく、痛みや食べにくさの原因になります。
違和感を放置してはいけない理由
あなたは「いつか慣れるだろう」と我慢して入れ歯を使い続けていませんか?
実はそれがさらなる問題を招くこともあります。
〇噛む力の低下
入れ歯による違和感が強いと、咬む力を無意識に抑えてしまい、顎の筋肉や骨の退縮を早める恐れがあります。ますます入れ歯が合わなくなり、負のスパイラルに陥ることにも繋がりかねません。
〇栄養状態の悪化
「食事がしにくい」「味を感じにくい」など、食事の際のストレスは、食事量の減少や栄養不足の原因にもなります。特に高齢者の場合は、全身の健康に影響を及ぼす恐れもあります。
〇口腔内の衛生悪化
合わない入れ歯をそのまま使い続けると、食べかすなどの汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖しやすくなります。その結果、口臭や炎症、誤嚥性肺炎のリスクも高まります。
上顎の総入れ歯の違和感を改善する方法
①歯科医院での定期的な調整を受ける
入れ歯を使い始めると、顎の形や咬み癖などによってフィット感が変わっていきます。そのため、数か月ごとに微調整を行うことが必要です。少しのズレでも、違和感の原因になります。
また、保険診療では、半年に1回までしか入れ歯の再製作ができないため、一度製作した入れ歯を正しく調整しながら長く使うことがとても重要です。
②自己判断で削らない
「痛い部分があるから」「もっと薄くしたいから」と自分で削ってしまうのは非常に危険です。構造全体のバランスが崩れ、かえって不具合が悪化する恐れがあります。違和感がある場合は、必ず歯科医院で調整を受けましょう。
③徐々に慣らしていく
新しい入れ歯を使い始めたら、長時間つけっぱなしにせず、短時間の装着からスタートして徐々に慣らすことが大切です。食事も柔らかいものから始めて、違和感がないか確認しながら進めると良いでしょう。
④入れ歯のお手入れを欠かさない
毎食後に入れ歯を外して洗浄し、定期的に入れ歯専用の洗浄剤でケアすることも、違和感の予防につながります。清潔に保つことで、細菌の繁殖や口臭も防げます。
違和感を抑える「自費診療」の選択肢
保険の入れ歯はアクリル樹脂製で、強度を保つために一定の厚みが必要です。違和感を抑えたい場合は、自費診療の選択肢も検討されると良いでしょう。
●金属床義歯(チタンやコバルトクロム)
- 薄くて軽い
- 温度が伝わりやすく、味も感じやすい
- 耐久性が高く、精密なフィット感が得られる
などの特徴があります。
上顎の違和感を減らすには、金属床義歯は非常に効果的な選択肢と言えます。
●インプラント義歯(オーバーデンチャー)
顎の骨に数本のインプラントを埋入し、入れ歯を固定します。外れにくく、ずれにくい安定感が得られるため、違和感を最小限にすることができます。
●シリコーン義歯
歯ぐきに触れる部分が柔らかい素材でできており、吸着性が高く痛みも出にくい構造になっています。特に「どうしても上顎の入れ歯が苦手」という方には好まれます。
自費診療で製作する入れ歯は、機能面だけではなく、審美面での違和感も減らすことができます。しかし、その分費用がかかるため、事前に歯科医師とよく相談してから治療方法を決定するようにしましょう。
快適な入れ歯生活を送るために
上顎の総入れ歯に違和感を覚えるのは、ごく自然なことです。しかし、「慣れるまで我慢する」のではなく、あなたのお口に合った選択肢と、適切なケア・調整によって、違和感のない快適な生活を取り戻すことが可能です。
もし、
「今の入れ歯に違和感がある」
「すぐに外れてしまう」「喋りにくい」
「もっと自然に使える入れ歯にしたい」
こうしたお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度、歯科医院にご相談ください。
あなたに合った入れ歯の選択肢と調整法を見つけることで、食事や会話の楽しみを取り戻すことができるでしょう。