親知らず抜歯後の痛み・腫れはいつまで続く?症状を軽くするためにできること
監修:歯科医師 高島光洋
親知らずは、だいたい10代後半から20代頃に生えてきます。もともと親知らずがない方もいます。親知らずの存在は、歯科医院でお口の中全体のレントゲン撮影を行なえば一目でわかります。まっすぐ生えてくる親知らずなら特に問題ないですが、横に向いている親知らずだと、虫歯や歯周炎の原因になることもあるため抜歯が必要になることもあります。今回は抜歯後のトラブル、痛みや腫れへの対処法をお伝えします。
1.抜歯後には痛みや腫れが出ることがあります
2.親知らず抜歯後の代表的な症状
2-1ドライソケットとは?
2-2抜歯後の腫れ
2-3その他、抜歯後に避けた方が良いこと
3.安全に親知らずを抜歯するために
4.まとめ
抜歯後には痛みや腫れが出ることがあります
麻酔は治療後、約3〜4時間できれるため、その後痛みが出てきます。麻酔がきれる前に、あらかじめ痛み止めを服用しておくと痛みが出にくいです。痛みのピークは1~2日後で、腫れのピークは3~4日後くらいです。少しずつ痛みは落ち着き、痛み止めが必要なくなります。通常の場合、1週間後くらいには、ほぼ痛みはなくなります。
傷口が大きい場合は、痛みや腫れが長引くこともあるため、翌日に傷口の確認を行なう場合もあります。
親知らず抜歯後の代表的な症状
親知らず抜歯後の代表的な症状として「ドライソケット」と「腫れ」が挙げられます。抜歯後、1週間以上経っても痛みが続く場合は、ドライソケットが疑われます。親知らずの抜歯においては、だいたい3~6%の確率で起こると言われれています。それほど高い確率ではないですが、起こった場合は激痛や悪臭を伴います。特に、下の親知らずの抜歯の場合はドライソケットが起こりやすいです。
ドライソケットとは?
通常、抜歯後は歯を抜いたあとの穴に血液が溜まり、血の塊(血餅)ができて、それがかさぶたの役割をすることで傷口を守ってくれます。しかし、歯を抜いた後の穴に血餅ができず、骨がむき出しの状態になって細菌感染を起こすことがあります。これをドライソケットといい、激痛や悪臭を伴います。
多くの場合、1ヶ月程経過すれば状態が改善し、自然に治ります。異常を感じた時は、迷わず歯科医院に連絡しましょう。
抜歯後の腫れ
親知らずを抜歯する場合、親知らずが半分または完全に埋まっている状態だと、歯茎を切開する必要があります。また、親知らずが横に向いている場合は、歯茎を切開し骨を削る必要もあります。このような場合は、抜歯後の腫れが起きやすいです。外見からもわかるくらい大きく腫れることもあるので心配になるかもしれません。腫れのピークは抜歯後3~4日後なので、1週間くらいすれば自然に治ります。(腫れの程度は、親知らずの生え方、体調などによっても左右されます)
身体に傷がついて腫れるのは身体を治すための炎症反応の1つです。心配しなくても大丈夫です。
腫れた場合は冷やさず、そのままにする方が良いです。冷やしすぎると血流が悪くなり、傷の治りも悪くなります。冷やす方が楽な場合は、冷やしても構いませんが、濡らしたタオルで冷やすくらいにしましょう。
その他、抜歯後に避けた方が良いこと
①強いうがい
抜歯した当日は、うがいは控えましょう。強くうがいをすると、歯を抜いた穴に溜まった血の塊(血餅)がとれてしまい、治りが悪くなることがあります。
口に血が溜まる時は軽く吐き出し、滅菌ガーゼを噛むと良いです。
②患部の歯磨き
抜歯当日は軽く口をゆすぐ程度にし、歯磨きは抜歯の翌日から行いましょう。歯茎を糸で閉じている場合は、糸に歯ブラシが引っかからないように気をつけましょう。
③患部を冷やす
腫れても冷やす必要はないです。冷やしすぎると血流が悪くなり、治りが悪くなります。冷やす方が楽な場合は冷やしても構いませんが、氷は使用せず濡らしたタオルで冷やすくらいにしましょう。
④患部を触る
舌で触ったりすると、歯を抜いた穴に溜まった血の塊(血餅)がとれてしまい、傷口の治りが悪くなることがあるため、傷口はなるべく触れないようにしましょう。
⑤激しい運動
抜歯後は安静にしましょう。激しい運動をして血流が良くなると、再度出血することがあります。
⑥長風呂
熱いお風呂での長風呂も控えましょう。血流が良くなり、再度出血することがあります。抜歯当日は、シャワー程度にすると良いです。
⑦喫煙・飲酒
抜歯前、抜歯後は喫煙を控えましょう。喫煙者は非喫煙者よりも毛細血管が収縮し、治りが悪くなります。また、免疫機能も低いため感染リスクも非常に高くなります。
飲酒は、血流を良くするので、再度出血しやすくなります。飲酒も控えましょう。
安全に親知らずを抜歯するために
①事前に歯科用3次元CTを撮影する
まっすぐに生えている親知らずであれば、スムーズに抜歯することができます。しかし、半分または完全に埋まった状態や横に向いた状態などの親知らずは、歯茎を切開したり、骨を削ったりする必要があるため抜歯の難易度が上がり、時間を要したり出血量が増えることがあります。事前にCT撮影を行なうと、2次元のレントゲン写真より精密に状態を確認できるため、骨を削る量や出血量を最小限におさえることができます。
また、下の親知らずは大きな神経に近い所にあるため、その神経と接していないかどうかも確認でき、麻痺が起こるリスクも事前に知ることができます。
②口腔外科を標榜する歯科医院がおすすめ
親知らずの抜歯で歯科医院を迷うようであれば、診療科目に「口腔外科」を標榜している歯科医院に相談してみましょう。
一般の歯科医院で「口腔外科」を標榜する歯科医院は、院長や勤務医が大学病院や総合病院の口腔外科で経験を積み、その専門性を活かしながら一般的な虫歯・歯周病治療を行う歯科医院として開業していることがほとんどです。そのため、内科的な持病で薬を服用している方の治療でも細かく対応することが可能です。
治療によって設備などの対応が難しい場合は、大学病院や総合病院を紹介される場合もあります。
まとめ
親知らずは、一番奥にあり歯磨きがしづらく汚れが残りやすいです。そのため虫歯や歯周病のリスクが高いです。また、親知らずが横に向いて生えていると、隣の歯との間に汚れが溜まりやすく、親知らずだけでなく隣の歯まで虫歯や歯周病のリスクを高める事にもなります。親知らずは必ずしも抜歯しないといけないものではありませんが、ケアしづらかったり、他の歯に悪影響を及ぼすようであれば抜歯するのも1つの方法です。
まずは、歯科医院で診てもらい現状を知りましょう。抜歯は不安を感じやすいですが、不安なことも歯科医師に相談してみましょう。
また、親知らずの抜歯の前に歯茎の腫れがあると、腫れがおさまってからの治療になります。歯磨きも大切ですが、見にくい部分なので定期的にクリーニングを受けていただくこともお勧めします。