どうして唾液の量が多くなるのか?唾液が多くなる4つの原因について
監修:歯科医師 高島光洋
おいしそうな料理を目の前にして「よだれが出そう・・・」というのは、とても幸せな1場面です。しかし、普段から過度に唾液が分泌されて、何度も飲み込むために気分が悪くなったり、口からよだれとしてこぼれてしまったりするような場合には何か問題があるかもしれません。
唾液の量が増えるのは、正常な量を超えた唾液が分泌されるようになる場合と、身体の状態の変化や口腔機能の低下が原因になって唾液の量が増えたと感じていることがあります。 ここでは唾液の量が多くなる4つの原因について紹介します。
1.女性の妊娠による「よだれつわり」
2.風邪やアレルギーによる喉の腫れ、子供の耳下腺炎(おたふく風邪)
3.加齢による口腔機能の低下
4.脳卒中や神経障害などによって引き起こされる嚥下困難
5.唾液は健康維持のために必要なものです
女性の妊娠による「よだれつわり」
妊娠初期の女性に吐き気や嘔吐などの不快な症状が出る「つわり」。つわりには唾液が過剰に分泌されたり、唾液に不快な味を感じて飲み込めない、飲み込むと気分が悪くなるといった症状が出る「よだれつわり」があります。
女性が妊娠をすると、ホルモン分泌のバランスが変化するために唾液の分泌量が増えると言われています。
さらにつわりの症状で、唾液が飲み込めないために口の中に唾液が溜まってしまうので、ますます唾液が多くなったと感じてしまうのです。
ペットボトルの中にこまめに唾液を吐き出す、あめやガムを噛んだりすることで症状をやわらげられる可能性があります。
風邪やアレルギーによる喉の腫れ、子供の耳下腺炎(おたふく風邪)
アレルギーや風邪が原因で喉が腫れてしまい、唾液を飲み込むと痛身を感じるような時、無意識に嚥下回数が減少してしまいます。嚥下回数が少なくなると唾液が飲み込めないので、口の中に唾液が溜まりやすくなり、唾液の量が増えたように感じます。
また耳下腺炎(おたふく風邪)になった子供も、唾液を分泌する耳下腺が腫れて痛むために唾液を飲むことが出来ずよだれが多くなる傾向が見られます。
加齢による口腔機能の低下
人は高齢になると、口の周りや舌の筋肉が衰えてきます。その結果、食べ物や飲み物を飲み込む機能(嚥下機能)が自然に低下してきます。
普段であれば、口の中の唾液が増えてくると無意識に飲み込んでいるのですが、嚥下機能が低下すると唾液の飲み込みができずに口の中に溜まってしまい、唾液が増えたと感じるようになります。
脳卒中や神経障害などによって引き起こされる嚥下困難
特定の神経障害や脳卒中などの病気が原因で、嚥下機能に障害が出る可能性があります。痛みを感じる、口を上手く動かせないといった症状により、まったく唾液が飲み込めない人もいます。
嚥下障害を引き起こす可能性がある病気としては以下が挙げられます。
- 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
- パーキンソン病
- 脳卒中
- 多発性硬化症
- 筋ジストロフィー
唾液は健康維持のために必要なものです
口の中の唾液が多くなると、気持ちが悪く吐き出したくなるかもしれません。
しかし、唾液には次のような人間の健康維持のために必要なたくさんの役割を担っています。
・歯のエナメル質を強化するカルシウムやリン酸イオンのようなミネラルを運びます。
・唾液は免疫システムの重要な一部です。インフルエンザなどのさまざまなウイルスや菌が粘膜から体内に入ることを防いでいます。また歯をコーティングする免疫タンパク質を含んでいます。
・お口の中の潤滑剤としての働きをしています。口の中に唾液があるおかげで口と舌はスムーズに動くことができています。唾液がなければ、話したり食べたりするのは非常に難しいでしょう。
・口の中に残った食べ物カスを洗い流す自浄作用があります。食事をした直後に酸性になってしまう口の中を、中性に戻してバランスを取り直し歯が溶けることを防ぐ作用があります。
いかがでしょうか?
唾液は、これほどに口の中と全身の健康にとって重要な役割を担っています。